暴力団対策・取引停止
私は複数の企業の取締役を務めていますが、取引相手が暴力団関係の会社だという情報が入ってきました。法的に問題がないか確認したいのですが、誰に相談すべきでしょうか?
取締役として企業の管理・監督を行う立場にある方が、取引相手が暴力団関係の会社であるという情報を知り、その企業との取引について法的に問題がないかどうか確認を望む場合には、まずは以下に示す法的観点から検討をする必要があります。
【反社会的勢力との取引に関する法律等について】
一般社団法人日本企業団体連合会が定める「反社会的勢力対策に関するガイドライン」によれば、反社会的勢力との関係は、企業に対し業務に支障が生じ、不正に利益を得ることがあるため、企業にとって重大なリスク要因であるとされています。
反社会的勢力とは、犯罪組織等である暴力団、暴力団関係企業、その他の社会的権力を悪用し、不当な利益を得ることを目的とした団体等を示します。
一方、企業が反社会的勢力と交渉、取引等を行い、その利益を受けた場合、企業は刑法上の共同正犯として処罰されることがあります。また、企業が反社会的勢力に金銭等を提供する行為は、不正の一形態であり、資金源の追及や企業評判の低下等のリスクを伴うことがあります。
こうした背景から、平成18年4月には「暴力団等排除条例」、平成19年6月には「企業会計法」が改正され、反社会的勢力との取引を禁止する法制度の整備が進められています。
暴力団等排除条例では、暴力団等との取引等を禁止し、取引相手が暴力団等であることが明らかになった場合には速やかに取引を中止するよう義務づける内容となっています。一方、企業会計法は上場企業を対象に、暴力団等との取引内容を開示することが求められる制度です。
【取締役としての法的責任】
取締役は、企業の運営を管理し、企業全体の利益を最大化することが求められています。そのため、企業との取引相手が反社会的勢力であることが判明した場合には、速やかに取引を中止することが求められます。
取締役が反社会的勢力との取引に関与した場合には、企業に損害が発生し、不正に利益を得た場合には、刑事罰や賠償請求等の法的責任が発生することもあります。また、企業から適切な措置を講じず、損害を被ったステークホルダー(株主、顧客、従業員等)からの損害賠償請求を受ける可能性もあるため、企業のリスクマネジメント上、取締役は慎重な判断が求められます。
【チェックポイントと対応策】
ここで、取締役として反社会的勢力との取引に関する法的問題を把握し、対応策について考えるためのチェックポイントをまとめます。
① 取引相手の情報
取引相手が暴力団関係企業である情報を入手した場合、取引の状況や取引相手の関係者、収益源等について詳細に調査し、企業全体のリスクについて考慮することが必要です。
② 取引の中止について
取締役は速やかに反社会的勢力との取引を中止することが求められるため、緊急時には取締役会等で定めた手続きに従い、中止の決定を行う必要があります。
③ 企業内の取引規程の整備
反社会的勢力との取引を禁止する企業内の取引規程の整備や、取引相手との取引前提条件等に関する運用ルールの策定、取引相手の情報収集体制の整備等が必要です。
以上、取締役としての法的責任やチェックポイント、対応策について述べてきました。反社会的勢力対策に関する法令や業界団体等によるガイドライン等に基づき、企業全体で対応策を講じることが重要です。なお、複数の企業の取締役を務めている場合には、各企業の体制や取締役会等のトップ経営層と連携を図り、反社会的勢力との取引を防止することが求められます。
おすすめ法律相談
Iさんは、父が亡くなり、遺産分割協議を行うことになったが、父が生前に作成した遺言書が現れず、どのように相続財産を分けるべきかわからなくなっています。Iさんたちは、父の遺志を尊重したいと考えているが、遺言書がないため、どうすればよいのかわからない状況です。
まず、相続財産については民法第887条により、相続開始時点で死者が所有していた...
Eさん「政治団体からの寄付を断ることは可能ですか?」 Eさんは、ある政治団体から寄付を受け取る予定があるが、その団体と関係が悪化しているため、寄付を受け取りたくないと考えています。政治団体からの寄付を断ることは可能なのでしょうか?
政治団体からの寄付を断ることは可能です。しかし、政治団体からの寄付の受け取り方...
自分が勤める会社が取引相手が暴力団対策に反しているとして、取引を停止したところ、新たな取引先が見つからず、業績が低迷しています。どのようにすれば新たな取引先を見つけることができますか?
まず、取引相手が暴力団対策に反する場合、それは法的に問題があることです。日本国...
Aさんは、高齢になり、万が一のことを考え、遺言書の作成を考えている。自分の持ち物や不動産、預金などをどのように分けて遺したらいいか、また相続人に対して贈与をすることも考えている。
遺言書の作成について 遺言書とは、自らの死後に財産の分配や相続人に対する指示...
Dさんは、工事会社と契約を結んでいたが、完成予定日までに工事が終わらないことを懸念し、契約解除に向けての対応策を相談している。
Dさんが工事会社と契約を結んだ場合、建設工事契約書や建設業法、民法などの法的規...
Aさんは、市内にある工場から排出される有害物質により、健康に深刻な影響を受けています。工場は環境基準に違反しているとの情報がありますが、なかなか改善されていません。どのようにすれば工場の排出を抑え、被害を受けないようになるのでしょうか。
Aさんが、市内にある工場から排出される有害物質により健康に深刻な影響を受けてい...
自分たちの会社が暴力団組織から脅迫を受けており、取引を継続しなければならないという状況にいます。しかし、このままの状況だと会社の信用が落ち、将来に影響が出ることを懸念しています。どのようにすれば取引停止をすることができますか?
まず、暴力団組織から脅迫を受けている場合、犯罪被害者等生活再建支援法が適用され...
Aさんは、一軒家の増築工事を依頼しました。しかし、工事中に工事業者が施工計画通りに進まないことが多く、差し迫った納期に間に合わない状況に陥っています。さらに、工事中に建物にダメージを与えてしまい、修繕費用が発生しています。
Aさんが一軒家の増築工事をビジネスなどのために行いました。しかし、工事業者が施...